十津川に注ぐ小支谷  60 葛谷 

  風屋ダム湖をまたいで対岸に開く長大な支流が神納川だ。神納川のすぐ下流に大黒谷がある。開口部は大きく開けており、段差のある渓相がみられる。小谷の割に大きな雰囲気のある谷だ。大きな落差のある下流部を避けて中ほどから攻める谷だ。入渓はしたが竿を出すことなく引き上げた。苦労の割にむくわれない感じがしたからだが、これはその時の体調にも大きく左右される。気力の無い時には魚は釣れない。そればかりか思わぬ怪我をすることもある。開口部が広く、その割に水量が少ない谷は、基本的に荒れ谷で、鉄砲水が出やすい。こういう谷での雨中釣行には、とくに気を付けた方がよい。

葛谷をまたぐ橋。林道はここで谷筋と離れる。谷は数百メートル奥で渓相を変化させる

  この谷も隠れ谷と言ってよい。二津野ダム湖の左岸に注ぐ小谷だ。二津野ダムを過ぎてすぐ国道を左方に180度折れ曲がり、しばらく下るとダムの堰堤に出る。堰堤の上を通過して対岸に渡り、しばらく行くと葛谷のバックウオーター付近に出る。優しそうな気持ちの良い渓相が迎えてくれる。道はここで谷をまたいで山の集落に向かう。平谷小学校のスクールバスはこの先の集落まで入って子供を迎えている。
  バックウオーターから数百メートルは平坦な渓相だが、徐々に落差のある渓相に変化する。この谷には大きな特徴がある。平坦な下流域では、ハエ、カワムツ、アブラハヤなどの渓流域より下流に生息する魚種に交じって源流域に生息するアマゴが共生しているのだ。源流域と中流域の魚種が混在する河川は山間の長大な支流によく見られるが、このように短い流程の谷で混在しているのは面白い。数は出ないが天然の美しいアマゴに出会えるのはうれしい。