13 吉野川支流上多古川 14 上多古川支谷上谷
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上多古川と吉野川の出合付近(左上)、上多古川の中流の渓相(右上と左下)、上流部の最後の堰堤は砂利で埋まり平坦河原になってしまった(右下)。この先からが上多古川の上多古川らしさが現れる。写真がないのが残念。いずれ再掲。大岩を囲み水しぶきをあげる力強い渓相が現れる。 |
上多古川
右下の写真はは、源流部入り口にある最後の堰堤を埋め尽くした砂利の河原。ここから先には砂防堰堤はなく、自然そのままの渓相となる。実は、この砂防堰堤を僕は「オミヤゲ」と呼んで大雨が降ると夜明け前に家を抜け出し、この場所で竿を出し続けた時期がある。見える河原はほとんど水没し、小さな中州が出来るのだが、台風の大出水後、まだどの谷筋も水量が多く、仕方なく、大河となったこの堰堤の中州に入って大釣りをしたことがあったのだ。僕の釣り上げた尺近い大型アマゴを追って、さらに巨大な(40センチはあったと思う)アマゴが、腰まで水に入って竿を出している僕の1メートル近くまで追いかけてきて、度肝を抜かれたこともあった。この場所は、親しい釣り仲間数人に教えたが、他の谷で釣れなかったとき、夕刻にこそっと訪れて「オミヤゲ」を頂戴するという不思議なルールができあがっていた。約3年、「オミヤゲ」は続いたが、その後の度重なる出水で堰堤を完全に土砂が埋め尽くしてしまい、ついに「オミヤゲ」は幻の場所になってしまった。源流域へは山道をどんどん歩き、ひととき谷から離れて山を巻き、ふたたび水音が聞こえてくると、そこはもう別世界。大岩と滝坪が連続する、川歩きの者にしか見ることが出来ない美しい渓谷である。川上村では、この上多古川はホームグラウンドといってもいいくらい通い詰めた谷である。
上谷
上多古川右岸沿いに車を走らせると、間もなく、左手から流れ下る上谷(コウタニ)川をまたぐ。道はここで分岐し、谷に沿って高度を稼ぐように登っていく。上谷は上多古川合流付近から中・上流までは階段状の谷。車道の終点からは、谷沿いに細い山道が続く。急峻な渓谷を抜けるとうそのように静かな瀬が突然出現する。一日をかけて歩くには最適の谷。水量もそこそこあり、十二分に渓流釣りを満喫できる。実は、アマゴの瀬づきを初めて見たのがこの谷だった。小さな壺の瀬開きの浅瀬でメスアマゴが産卵床を体をくねらせながら作り、その周辺をやや小振りのオスアマゴが付かず離れず寄り添っていた。印象的な光景だった。地元の人の話によると、この谷は、その昔アマゴの宝庫だったらしい。尺物がいくつも捕れたという。そんな谷は、いまや伝説の世界にしか存在しなくなってしまったが、一人でゆっくり歩く(登る?)には、よく出来た谷のひとつには違いない。