21 天ノ川本流 天ノ川支流(22〜28) 


27 天ノ川上流川迫川

 天ノ川上流は、川迫川(コウセイ川)と呼ばれる。川迫川に沿って林道が走る。林道は大峰連山・行者還岳の真下のトンネルを抜けて上北山村に結ばれる。川迫川にはダムがある。自然林が残る大峰連山から放たれる豊富な水を集めて水路トンネルで天ノ川下流に流し高低差で発電をしている。ところが、山からはじき出されるのは水だけではない。水に削られた大量の岩石が流れ下ってくる。まさに川迫川ダムは砂利に埋め尽くされようとしている。砂防堰堤という方が似つかわしいようなダムである。ダム上流部は、家ほどもある大岩がごろごろと積み重なっているところと、適度なチャラ瀬が交互に出現するような渓相である。川迫川はさらに上流部で、神童子川、布引谷、小坪谷に分岐する。このあたりからは、大峰の山頂に向かってせり上がるような険しい谷となり、釣りというより登山という趣になる。とても釣りを楽しんで歩くという谷ではない。
 行者還の林道から見る山は美しい。植林がほとんどなく、雑木の自然林が絨毯のように山を覆っている。紅葉の季節は、この道はけっこうな渋滞を生む。十津川水系と北山川水系を結ぶ林道は2本ある。ひとつは、白谷林道(県道420号線)。もうひとつが、この行者還林道(県道309号線)である。いずれも深い自然林の山腹を縫うようにくねくねと走る道だが、自然のど真ん中を走っている実感がある。紅葉もいいが、僕はやっぱり新緑の季節が一番スキだ。体までが緑に染まるような初夏の山もいい。釣りに興味のない人も、一度は走って欲しい道である。行者還林道は割と整備が行き届いており、走りやすい道だと思う。ただし、スピードの出し過ぎにはくれぐれも注意のこと。ガードレールの一歩先は奈落の底ですから。